監督よりのメッセージ

ニア・ディナタ

 

インドネシア社会の一部分において、ポリガミー(一夫多妻制)は生活スタイルの一面となってきました。それは、公表している場合もあれば、隠している場合もありますが、どちらにせよ複数の妻を持つこと、このポリガミーという現象が私の関心を捉えたのです。

 

一般的にイスラム教は一夫多妻制を認めていると考えられていますが、実際にはムスリムに限らず、異なる宗教的背景を持った様々な階層の人々が一夫多妻的生活を送っているのが現状です。

 

このポリガミーという現象について私自身が観察、調査を重ねたのち、私はBerbagi Suamiのシナリオを書く決心をしました。そこに登場する女性は、バタヴィアのエリート階級で50代のサルマ、ジャワ地方出身で30歳手前のシティ、華人系で19歳になったばかりのミン。年齢も、社会的地位も、出身も全く異なるこの3人の女性たちが、それぞれの視点から自身のポリガミー生活を語っていきます。

 

私はごく普通の、日常的に私たちの周りで起こっているようなことを、現実味のある葛藤を交えてスクリーン上に描き出したかったのです。私たちがポリガミーを考えるにあたって、また、結婚生活においてある決断を下す際に、心の目をより開かせることになればと思っています。既に結婚している方にも、これから結婚を考える方にもぜひ観ていただきたい作品です。

 

製作にあたっては、献身的なチームのお陰で、撮影が予定通りに終了したことに感謝しています。撮影監督を務めてくれたイプンとはこれまでにも何度か一緒に仕事をしてきましたが、今回も私の思っていることを映像の中に効果的に描き出してくれました。私はこの作品の中でそれぞれの役者が持つキャラクターそのものを際立たせたかったので、役者たちの動きが制限されるよう、カメラのアングルと動きがオーバーラップし過ぎないように気をつけました。

 

美術面では、美術監督のイウェンがサルマ、シティ、ミンのキャラクターを徹底的に追究してくれたおかげで、ポリガミー生活を送るこの3人のキャラクターをそれぞれの居場所において効果的にビジュアル化することができました。なんとイウェンは私のジャケットのサイケデリックな模様からもインスピレーションを得て、ミンのアパートの壁の模様にしてしまったんです。実はそれがなかなかよい雰囲気を醸し出して、大正解だったのですが。

 

また、今回の映画でアクサラ・レコードのハニン・シダルタと再会できたことにも感謝しています。彼は私の旧友で、学生時代は共に映画鑑賞が趣味でした。Janji Joniのオリジナル・サウンドトラックを製作したときから、ハニンとアクサラ社のチームが本当に自由な、それでいて映像にぴったりの音楽を創造できることが分かっていたので、Berbagi Suami でも他と組む気にはなれませんでした。Janji Joniとはジャンルが違っていても、ハニン、ダフィッド、アギ、モンドとベンビが、彼らの持つ限りない音楽的感性によって、必ずこの作品にふさわしい音楽を生み出してくれると確信していたのです。

 

このほかにも、衣装、メイク担当をはじめ製作に加わった全てのスタッフがこの映画のディテールを描き出すために真剣に取り組んでくれました。皆、本当に真剣にやってくれました。そんな中でも、撮影中は笑いとジョークが絶えないのですが…。

 

そして、これら全ての製作スタッフたちの努力も、実際に演じる俳優たちをなくしては語れません。台本読みからリハーサル、撮影の間も、そして編集段階になって再び彼らが私の目の前に映し出されたときも、私は常に彼らの魂の存在を感じていました。ジャジャン、シャンティ、ドミニク、ヌンキ、エル・マニック、ウィンキ、ルクマン、リエク、リア、ティオ、イラ、ルベン、皆、私の期待以上に、完璧にそれぞれの役を演じきってくれました。この作品には何人もの大物俳優たちが出演していますが、これは真に彼らが今回のキャスティングに適ったからであって、有名であるかどうかということは全く関係ありません。私の心が、私に彼らを選ぶようにと語りかけたのです。

 

視聴者の皆様にこの作品をお楽しみいただけるよう願っています。


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